近年ウェブサイトにおいて、デザインやコンテンツの質だけではなく、「年齢や身体的条件の有無にかかわらず、誰もがウェブサイトを利用できること」がますます重要になっています。それを実現するための取り組みが「ウェブアクセシビリティ」です。ウェブサイトは、高齢者や視覚・聴覚に障害のある方など、さまざまな背景を持つ方にとっても重要な情報源となりつつあります。ウェブアクセシビリティに対応することで、多くのユーザーにとって使いやすくなるだけでなく、SEOの観点からもメリットがあります。この記事では、ウェブアクセシビリティの基本から、実際の対応例、チェックツールの紹介まで、初心者向けにわかりやすく解説していきます。ウェブサイトを改善したい方やアクセシビリティに関心がある方は、ぜひ参考にしてみてください。ウェブアクセシビリティとは?ウェブアクセシビリティとは、年齢や身体的条件の有無にかかわらず、誰もがウェブサイトを利用できるようにするための取り組みです。特に、視覚・聴覚・運動機能や認知能力に制限のあるユーザーにも、必要な情報に問題なくアクセスし利用できることを目的としています。一般的に「ウェブアクセシビリティが確保できている」状態とは、次のような条件を満たしていることを表します。・目が見えなくても情報が伝わる・操作できること・キーボードだけで操作できること・一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと・音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること引用:デジタル庁-ウェブアクセシビリティ導入ガイドブックhttps://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basicpage/fieldrefresources/08ed88e1-d622-43cb-900b-84957ab87826/53f76eaa/20240329introductiontoweba11y.pdfこのように、単に「使いやすいウェブサイト」を作るだけではウェブアクセシビリティが確保できているとは言えず、年齢や身体能力などにかかわらず、すべてのユーザーが利用できる必要があります。ウェブアクセシビリティの対象者ウェブアクセシビリティの対象となるのは、以下のようなユーザーです。視覚障害のある方スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)を利用してウェブページを閲覧するユーザー。例えば、画像には代替テキスト(alt属性)が必要です。弱視の方は文字拡大、画面拡大などの機能を使用します。聴覚障害のある方音声コンテンツに対して、字幕や文字起こしが必要です。運動障害のある方キーボード操作のみでウェブページを操作するユーザーがいます。マウスを使用できない場合でも、快適に操作できる状態が求められます。発達障害や学習障害のある人、知的障害がある方情報を理解する速度や方法に違いがあるため、シンプルで分かりやすいコンテンツやナビゲーションを必要とすることがあります。色覚特性がある方特定の色の区別が難しいため、色に依存しないデザインや明確なコントラストが必要です。高齢者視力や聴力、反応速度が低下するため、フォントサイズやボタンのサイズ、色のコントラストが調整されている必要があります。これらのユーザーに対応することは、アクセシビリティの確保に直結しますが、結果としてすべてのユーザーに対して使いやすいサイトを提供することにもつながります。ウェブアクセシビリティに対応するメリットアクセシビリティを高めることには、多くのメリットがあります。より多くのユーザーに届けることができる障害を持つユーザーだけでなく、視覚や聴覚が衰えた高齢者や、一時的にデバイスの操作が制限されている人もウェブサイトにアクセスしやすくなります。顧客満足度が向上する読みやすく使いやすいウェブサイトに仕上がることで、一般の人にとっても利用しやすく好感を持ってもらえるようになります。SEO(検索エンジン最適化)に効果的画像に代替テキストをつけたり、見出しタグなどの適切な設定を使用することで、検索エンジンの評価も向上します。結果的に検索結果で上位に表示されやすくなります。将来的な起訴リスクを回避できる多くの国ではウェブアクセシビリティの対応が法律で義務付けられており、日本でも2024年4月1日から法改正により障害を持つ人への「合理的配慮」が義務化されました。まだ負担が重すぎない範囲での努力義務ではありますが、今後ウェブアクセシビリティの確保自体が義務化される可能性もあるため、備えておくと安心でしょう。このように、ウェブアクセシビリティを高めることは、ビジネスの成長や信頼感にもつながります。早めに取り組むことで、より多くのユーザーに支持され、好感を得られるウェブサイトが実現できます。ウェブアクセシビリティの対応例ウェブアクセシビリティに対応するための基本的な対策を、具体的な例とともに紹介します。ロゴ・写真・イラストなどの画像に代替テキスト(alt属性)を追加する視覚障害者がスクリーンリーダーを利用して画像の内容を理解できるようにするために必要な対応です。例えば、商品の写真には「赤いTシャツを着たモデルがポーズを取っている」といった説明が必要です。装飾や意味を持たない画像の場合は、代替テキストは追加せず問題ありません。背景色と文字色のコントラストをつける視覚に障害を持つユーザーや色覚異常を持つユーザーにとって、色のコントラストは重要です。背景色と文字色のコントラストが十分でないと、文字が読みにくくなります。適切な色の組み合わせを使い、可読性を担保する必要があります。音声や動画コンテンツに字幕を追加する聴覚に障害のある方でも理解できるように、音声や動画コンテンツに対して字幕や文字起こしが必要です。スクリーンリーダーで読み上げた際に、意味が分かる順序にする目が見える人は、ウェブサイトを目で追いながら、必要な情報を素早く見つけることができます。しかし、スクリーンリーダーを使用する場合、キーボード操作でページの最初から1つずつリンクや文章をたどりながら、音声で内容を確認していきます。この際、読み上げる順序が自然でないと、情報を理解することが難しくなります。スクリーンリーダーはHTMLソースコードに記載された順に、一般的には左上から右下へとコンテンツを読み上げます。そのため、視覚上だけでなくソースコードの順序も考慮しながらコンテンツ設計することが重要です。キーボードだけで操作できるようにするキーボードだけでウェブサイトのすべての機能が操作できることは、アクセシビリティ対応の重要な要素です。リンクやボタンにキーボードでアクセスできるようにし、Tabキーで操作できるように適切な設定が必要です。例えば、モーダル表示の際に閉じるボタンを追加するなど、キーボードだけでも操作できるようにしましょう。リンクを適切に表現するリンク先がどこへ遷移するのか、何についての情報であるか、簡単に理解できるようにしましょう。リンクの文言が同一だと、複数ある場合識別しづらくなるので注意が必要です。また、リンク先がPDFや外部ウィンドウを開く際は、アイコンを設置するなど分かりやすくすると親切です。同じ機能には同じパーツを使用する同じ機能を複数実装する際には、同じパーツ(アイコン、説明文など)を使用するようにしましょう。同じ役割のボタンにもかかわらず、違った文言やアイコンを使用すると、直感的に分かりづらくなります。ボタン要素などはコンポーネントで管理するなど、一貫性を持たせるようにするようにし、一目でわかる構成を目指しましょう。動きや点滅があるコンテンツには注意する動きや点滅のあるコンテンツは、一部のユーザーにとって不快感を与えるおそれがあるため注意が必要です。アニメーション、スライドショーなどのコンテンツでは、他の箇所の操作や閲覧を妨げられる場合もあるため、一時停止、停止、非表示にすることができるようにすると安心です。また、光の点滅は強い視覚刺激を感じるため、1秒に3回を超える点滅をするコンテンツは避けましょう。無料で使える!ウェブアクセシビリティチェックツールColorTesterhttps://alfasado.net/apps/colortester-ja.html2色のコントラスト比を計算し評価するツールです。コントラストの評価はJIS X 8341-3:2010 (WCAG 2.0)の達成基準に基づいています。色覚異常のユーザーにも配慮した配色ができているか確認することができます。Lighthousehttps://chromewebstore.google.com/detail/lighthouse/blipmdconlkpinefehnmjammfjpmpbjk?hl=ja&pli=1Googleが提供するウェブパフォーマンスおよびアクセシビリティのチェックツールです。チェックしたいサイトを開き、拡張機能として使用するだけで簡単にアクセシビリティの改善ポイントについてレポート作成することができます。Studioアクセシビリティチェックシートhttps://docs.google.com/spreadsheets/d/1L99jvJPqAHC9iajuyS6AFHe18jhJppr4Kdno83WBNnE/edit?gid=0#gid=0Studioが提供するアクセシビリティのチェックシートです。国際標準のアクセシビリティガイドラインであるWCAG 2.1のレベルAおよびAAの達成基準をクリアするために、Studio上で実施すべき対応や設定方法を一覧化しています。ウェブアクセシビリティ対応で必読サイト紹介ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(デジタル庁)https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basicpage/fieldrefresources/08ed88e1-d622-43cb-900b-84957ab87826/53f76eaa/20240329introductiontoweba11y.pdfウェブアクセシビリティに関する詳細情報と実践的なアドバイスが充実しています。信頼性の高い内容ですので、これを参考にすることで要点をしっかり押さえることができます。Accessible Website Galleryhttps://www.aaa11y.com/アクセシビリティに配慮したウェブサイトの事例集です。実際のサイトのデザインや構造を参考にしながら、アクセシビリティの対応事例を学べます。ウェブアクセシビリティ-内閣府https://www.cao.go.jp/notice/webaccessibility.html内閣府が提供するウェブアクセシビリティに関する情報です。日本国内の基準やガイドラインに準拠した情報が確認できます。まとめウェブアクセシビリティ対応は、複雑で手間がかかると感じる方もいるかもしれませんが、今後その重要性はますます高まっています。すべての人が利用しやすいウェブサイトを提供することは、ユーザーの多様なニーズに応えるだけでなく、企業やサービスの信頼や好感度向上にもつながります。今回ご紹介した対応例を参考に、まずは出来ることから取り入れてみてはいかがでしょうか。当社では、単にビジュアルが良いだけではなく、戦略部分に重きをおいたワークフローで成果に繋がるWebサイトを制作することを重要としています。ヒアリングに加えて、詳細な分析を行い、「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「なぜ」「どのように」を明確にし、成果に繋がるWebサイトを目指して制作しています。戦略的にウェブサイトを制作したいという企業の方はぜひ、ノックデザインへのお問い合わせをお待ちしております!