近年、ホームページのデザインは多様化しています。元来の「なるべく軽く見やすい」というデザインは、企業やブランドのイメージに合わせて大きく変化しました。アニメーションを使用してユーザーの興味を惹きつけるデザインや、イラスト・写真をふんだんに使ったビジュアルデザインに近いもの、またはその両方を兼ね備えたものも見受けられます。もちろん、どのようなデザインを施すにも「見やすさ」はなくてはなりません。見た目と機能性の両方を兼ね備えたデザインというように、ホームページに求められるデザインレベルは、年々複雑化しています。しかし、全てのデザインがそうでないといけない訳ではありません。それぞれに合ったブランドイメージが必ず存在し、それぞれにマッチしたホームページ制作が必要です。本記事では、その中でも「シンプル」なデザインに焦点を当てて、特徴や事例を紹介していきます。シンプルなデザインのホームページとは?まずは、シンプルなホームページとはどんなものなのかについて解説して行きます。「シンプル」を日本語にすると、「単純」「簡素な」「素朴」などが挙げられますが、意味をそのまま受け取って作成してしまうと、ただ項目を羅列したものになってしまったり、情報がきちんと整理されておらず、ホームページのデザインとしては成り立ちません。デザインとして成り立つシンプルとはどんなものか、以下に特徴を3つ挙げました。使用している色数が少ないホームページを作成する上で、配色は大変重要ですが、シンプルなデザインを作成する際は、色を多用しないことが大事です。白をベースにした薄めの配色や、同系色でまとめることで、整頓された印象になります。また、使用したい色が濃く強い発色の場合は、アクセントカラーを一色決めて使用し、メリハリをつけることで洗練された印象を与えることができます。他の要素をなるべく単純なつくりにしたり、減らすことも、シンプルを表現する点で有効です。余白を活用しているシンプルなデザインにおいて、余白の取り方は非常に重要です。余白とは、コンテンツ同士の間にできる空白のことですが、この余白が適切に取られているだけで、見やすくスタイリッシュな印象を与えることができます。余白があることで、強調したい部分や、文字全体の視認性があがるからです。逆に、文と文の間が詰まっていたり、余白の大きさにバラつきがあると、ユーザーは「読みにくい」「何を伝えたいかわからない」などのストレスを感じてしまいます。情報がまとまっているホームページを開いた時に、必要な情報がまとまっていると、導線が整理されているためユーザーは迷わず目的のページへ行くことができます。ヘッダーメニューやフッターのサイトマップにも情報を整理しておくことで、シンプルかつ誰が見てもわかりやすいページになります。作成する前に、一度情報をどこにまとめて配置するのかを意識することが大事です。シンプルなデザインのホームページの利点シンプルなデザインを施すことで、企業側にどのような利点があるのかを見て行きます。更新・管理がシンプルで簡単になるWeb制作についての知識が無いと、運用や編集の難しいホームページですが、シンプルなデザインにすることで、簡単に管理ができます。複雑なアニメーションを使用していたり、コンテンツ量の多いホームページは、クオリティは高いものの、少し編集するにも専門的な知識が必要になってくるため、時間とコストが修正の量に対して大幅にかかってしまいます。その一方で、シンプルなデザインにすると、編集する箇所が明確かつ単純なので、専門的な知識がなくても、細かい修正は自社で対応できるのは大きな利点でしょう。情報を届けやすいシンプルなデザインのホームページの特徴でもある「情報がまとまっている」点は、ユーザーに対してもわかりやすく大きな利点です。ユーザーがホームページを見る際のゴールとして、必要な情報に素早くたどり着けるかが焦点となりますが、デザインがシンプルなことで、視認性が高く目的の情報を見つけやすいので、ユーザーの満足度を高めることができます。デザインの前に「見やすさ」はホームページにおいて非常に重要なことです。シンプルなデザイン以外にも、「見やすさ」に焦点を当てたホームページの作り方や事例が気になる方は、こちらも合わせてご参考ください。見やすいデザインのホームページ15選!構成やデザインのポイントも解説シンプルなホームページで注意したい点利点の多いシンプルなデザインですが、逆に、シンプルなホームページを作成する際に注意したい点をまとめました。情報を減らし過ぎてしまうユーザーが必要な情報に素早くたどり着けるように、内容をまとめることは利点につながりますが、情報の減らしすぎで、逆にユーザーを混乱させてしまう可能性があります。どこにどの情報が必要で、減らしてはいけない情報が無いか、ユーザーの目線に立つことを意識するのが大切です。ボタンなどの視認性が悪くなってしまう「お問い合わせ」や「資料ダウンロード」など、大事なCTAのボタンを簡素にしてしまい、視認性が悪くなってしまう可能性があります。基本的には単一のデザインですが、色を使うことでシンプルさが損なわれるわけではありません。アクセントカラーを使うなどで、強調したい部分と、そうでない部分でメリハリをつけましょう。他のサイトとの差別化が難しくなるシンプルなデザインは、ユーザーの利便性に作用している分、どうしてもインパクトに欠けてしまう可能性があります。業種によっては、スタイリッシュさや清潔感を「シンプル」でまとめてしまい、最終的にイメージとは少し違ったものになってしまうこともあるため、競合他社のホームページのデザインや、自社の社風、ブランドイメージをしっかり分析して、「シンプル」が本当に適しているかどうか見極めることも重要です。シンプルなデザインのホームページ20選ここからは、上記を踏まえたうえで、シンプルなホームページの条件を満たした事例を紹介して行きます。では、早速見て行きましょう。1.無印良品https://www.muji.com/jp/ja/storeシンプルで自然派の商品を多く取り扱う無印良品です。白を基調としたページに、商品がジャンルやランキング別に並んだシンプルでわかりやすいデザインです。ブランドイメージにぴったりで、初めてサイトに訪れた人でも、操作感をすぐにつかめます。2.TomorrowWaterhttps://tomorrowater.jp/障がいのあるアーティストたちが手がけたイラストをラベルのデザインとして使用した水を販売しているTomorrowWaterです。興味深いコンセプトですが、ページは白を基調としており、アートが目立つデザインになっています。作家の描いたアート以外をモノクロにすることで、メリハリがつき、何が主役なのか一目でわかります。3.LINEヤフーコミュニケーションズ採用https://career.lycomm.co.jp/ja/LINEヤフーが展開するサービスの運営や企画などを行うLINEヤフーコミュニケーションズの採用サイトです。採用サイトに必要な信頼感と安心感を、会社内や社員の写真で訴求しつつ、会社、仕事内容、人、環境という、働き手にとって特に知りたい情報へすぐにアクセスできるヘッダーとフッターの構成がシンプルでわかりやすいデザインに当てはまっています。4.資生堂https://www.shiseido.co.jp/sw/onlinestore/資生堂は、日本の化粧品ブランドで、特にスキンケア分野で高い評価を得ています。化粧品ブランドらしく上品な印象のページです。種類豊富な化粧品は、細かくカテゴライズされ、キャンペーンを一覧で見ることのできるコンテンツ等、たくさんの内容量ですが、ヘッダーのメニューバーに全てまとめられており、シンプルなデザインとして成り立っています。5.トヨタhttps://toyota.jp/トヨタは、日本を代表する自動車メーカーであり、世界的にも有名な企業です。コンテンツ同士の余白が適切に取られており、一つ一つの情報が見やすいデザインです。PCとスマートフォンどちらも使いやすいナビゲーションが施されており、ユーザーにとって親切な構成です。6.Applehttps://www.apple.com/jp/storeAppleは、iPhoneやMac、iPad等の電子機器を中心につくるアメリカのテクノロジー企業です。こちらもたくさんの商品展開がある企業ですが、製品・ジャンル別に分類されており、目的の商品を見つけやすいデザインです。一つ一つの商品も、四角いオブジェクトで括られていることで、見やすさが格段に上がります。7.IKEAhttps://www.ikea.com/jp/ja/IKEAは、家具・インテリア用品を扱う企業です。が画面左から右へ流れていくシンプルな導線に、商品の画像が豊富でユーザーにとって非常にわかりやすいデザインです。ブランドカラーの青と黄色を中心に、使用している色は多めですが、整えられた構成でシンプルな印象を与えられています。8.トンボ鉛筆https://www.tombow.com/トンボ鉛筆は、MONO消しゴムをはじめとした、誰もが一度は使ったことのある日本の文具メーカーです。検索機能では、カテゴリはもちろん、環境別に探すことができ、商品ページでは特徴なども含めた詳細を見ることができます。一つ一つの文房具へのこだわりが伝わり、尚且つシンプルで洗練された配色とデザインが、商品をより引き立てます。9.Studio Tremohttps://studio-tremo.com/Studio Tremoは、家族写真や結婚式の写真に特化したフォトグラファーのWebサイトです。ギャラリーだけでなく、TOPにも写真をたくさん使用していますが、白をベースとしたページに細いフォントを使用することで、清潔感や洗練された印象を与え、シンプルにまとまっています。基本的にモノクロで構成されていますが、カラーバランスがよく、写真が与えるあたたかみも同時に訴求しています。10.株式会社Medecohttps://cp.medeco.io/株式会社Medeco(メデコ)は、医療SaaS開発や医療特化型事業開発支援を行なっている会社です。企業カラーのオレンジを中心とした暖色と白の比率が絶妙で、シンプルかつあたたかみのあるデザインです。TOPでは製品やサービス内容など、必要な情報をまとめられており、詳細ページへ飛んでも内容からお問い合わせまでの導線がスムーズで、ユーザーの目線に立って作成されている印象です。11.株式会社セブンデックスhttps://sevendex.com/株式会社セブンデックスは、デザインからブランディング、マーケティング支援等の事業を幅広く行っている会社です。強い赤みがかったオレンジを使用していますが、要所要所で使用することで、全体とのバランスをとりつつ、この一色のみをカラーとして取り入れているため、シンプルを実現しています。ヘッダーにも必要なコンテンツがまとめられており、常にお問合せ導線が確保されているのもポイントです。12.株式会社FINDERShttps://www.finders-tokyo.co.jp/株式会社FINDERSは、首都圏広域でのお部屋探しをサポートする不動産です。繊細な線で表現されたイラストがメインビジュアルで、両脇にはおすすめの物件とお問合せ導線が常に確保されています。縦スクロールが画面真ん中でのみ作用する珍しいサイトですが、一画面で完結するというポイントが、構成・デザイン含めシンプルな印象を与えています。13.Money Forward Designhttps://design.moneyforward.com/株式会社マネーフォワードのデザイナーサイトです。メインビジュアルのイラストでポップな印象がありますが、基本的な装飾は抽象的なオブジェクトのみで、細いフォントを使用していることもありバランスが非常にとれたサイトだと感じます。全体的に主張の強すぎないコンテンツで構成されているため、シンプルなデザインと言えるでしょう。14.みらいワークスhttps://mirai-works.co.jp/株式会社みらいワークスは、起業や独立を応援する人材マッチング・転職サービスを行う会社です。TOPのメインビジュアルには、大きく企業のロゴとキャッチコピーを配置するシンプルなデザインで、背景色も赤みのかかったグレーで統一感があり、色味が非常に心地のいいデザインです。イラストや簡単なアイコンを用いながら、アクセントには企業のカラーである赤色を要所要所で使用しており、洗練されたイメージを持たせています。15.株式会社ステッドhttps://www.stead.co.jp/(制作:株式会社ノックデザイン)株式会社ステッドは、DX支援や業務システム開発を行うIT企業です。基本的にはモノトーンでの配色ですが、企業カラーの赤色を差し色に使用し、メリハリのついたデザインになっています。イラストと社内の写真を適度に使用し、サービス内容では、プルダウンで目的のページへ飛びやすい導線が確保されています。シンプルかつユーザーにとって使いやすいデザインです。16.平田タイルグループホールディングスhttps://hiratatileg-hd.co.jp/(制作:株式会社ノックデザイン)タイルと水まわりの総合プロデュース企業である平田タイルの、ホールディングスサイト立ち上げに伴い作成されたコーポレートサイトです。白を基調としたページに、企業カラーの赤色で強調させたいところを際立たせるデザインです。特に重要なお問合せなどのCTAへの導線が整えられており、掲載されている情報も必要最低限で構成されています。シンプルかつ誰でも見やすいと感じるデザインです。17.株式会社ノーススターhttps://nstr.co.jp/(制作:株式会社ノックデザイン)株式会社ノーススターは、医療・ヘルスケア関連サービスの提供を行っている会社です。シンプルでスッキリとしたレイアウトが、医療系の事業内容とマッチして清潔感を与えています。サービス内容や会社情報などへの導線がわかりやすく直感的に操作感を掴むことのできるデザインです。画像とテキストのバランスも整っています。18.株式会社総眞設備https://www.soumasetsubi.co.jp/(制作:株式会社ノックデザイン)株式会社総眞設備は、東京都を拠点に設備工事を手掛ける企業です。白と黒を基調としたシンプルな配色で、視認性と信頼性を訴求。レイアウトも簡単にし、視覚的に難しい箇所をなくしています。社員の顔が見えるよう写真を多用し、企業としての安心感を確保。ユーザーが知りたいサービス内容や施工事例などはヘッダーから迷いなく行くことのできる構成です。19.NTT DXパートナーhttps://www.nttdxpn.co.jp/NTT DXパートナーは、DXで地域の企業や自治体を支援するパートナー企業です。粒子の集まりを表すアニメーションを用いていますが、オブジェクトが細かいかつ色数を抑えたデザインでシンプルにまとまっています。直感的に操作感のわかる構成とレイアウトになっており、ユーザーにとって非常に優しい設計です。20.奥信濃の地酒 水尾https://www.mizuo.co.jp/株式会社田中屋酒造店の水尾は、主に奥信濃の地酒を販売しているメーカーです。テキストのフォントやサイズ、シンプルなレイアウトで地酒の洗練された雰囲気を印象づけられます。商品一覧からオンラインショップまでの導線、企業のストーリーまで、ヘッダーにまとめられており、一目で目的のページへアクセスしやすくなっています。シンプルなホームページのまとめ冒頭でも述べたように、「シンプル」とは、ただ情報を順番に羅列するだけではまとまらず、かえって「見づらい」とユーザーが感じる可能性があります。レイアウト、導線、配色、テキストのフォントやサイズ全てのバランスが保たれて初めて、シンプルなデザインとして成り立つということがお伝えできていれば幸いです。今後シンプルなデザインという課題にぶつかったときは、強調したいところや基本的な情報をまとめ、ユーザー視点でわかりやすい設計を構築することが、洗練されたシンプルなデザインをつくる一歩目であることを意識し、作成を試みてみてはいかがでしょうか。