会社の印象や「イメージ」を聞かれて、なんと説明すればいいか迷ったことはありませんか?経営理念や歴史、会社の概要とはまた違い、抽象的な話になってしまうため、言葉で表現するのは難しいと感じる方が多いのではないでしょうか。個人個人で異なった解釈をしていた結果、最終的な方向性がまとまりづらかったりと、イメージが浸透していないことで起こる問題もあります。これを解決するヒントになるのがアーキタイプです。特に、「ブランド構築」という分野において、アーキタイプはその会社の個性やチームの価値観を明確にするフレームワークとして注目されています。会社やチームの大事な価値観を全員で共有するために、ひとつ知識として取り入れてみてはいかがでしょうか。アーキタイプとは?そもそも「アーキタイプ」というのは、スイスの心理学者 カール・ユングの用いた心理学用語で、日本語に直訳すると「原型」という意味です。誰しもが育ってきた環境の中で、物事や概念に「基本的なパターン」「共通のイメージ」を得ます。例えば、「赤色」は熱く情熱的、「青色」は冷たく落ち着いたイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。このように、私たちは無意識のうちに共感したり、可視化できない概念を理解することができます。アーキタイプではこれを12の型に分けて定義しており、身近なものだと血液型や、最近ではMBTIなど、いくつかの型に性格を分類するのと似た感覚かもしれません。なぜアーキタイプがブランド構築のヒントになるのかでは、なぜアーキタイプがブランド構築に役立つのか、大きく分けて3つの理由を紹介します。1.顧客の共感を得やすい先ほど解説したように、アーキタイプは誰もが共感できるようなテーマにそって形成されています。「ヒーロー」や「ケアテイカー」など(後ほど解説します)、12の型から適切なものを選んで用いることで、共通したブランドのイメージを持つことができるので、顧客の共感を得やすく、興味もわきやすいです。また、アーキタイプは国内だけでなく、文化的な面も超えて誰にでも伝わる共通のテーマを持つフレームワークです。国や文化の異なる顧客にも、統一感を持ってメッセージを伝えることができます。アーキタイプは、グローバルな展開を考えている企業でも役に立つでしょう。例えば、スポーツブランドのadidasは「Hero(ヒーロー)」のアーキタイプで、「勝利」と「挑戦」を訴求し、人々の生活に変化をもたらすような強いメッセージ性を持ったスポーツブランドとして、世界的に認知され、愛されています。2.ブランドの統一感アーキタイプを用いることで、グループでの指針を定めやすくなります。抽象的な概念を誰もが同じように理解するのは簡単ではありませんが、アーキタイプを用いることで、メンバーそれぞれが共通したイメージを持ちやすく、長期にわたって一貫性をもって仕事を進めることができます。例えば、おもちゃメーカーのLEGOでは、「Creator(クリエイター)」の広告や製品全てにおいて「創造性を引き出す」テーマで統一されており、クリエイティブなイメージを強めています。3.差別化他の競合が似たような商品やサービスを提供していても、アーキタイプを用いることで明確な価値観をアピールすることができます。商品やサービスの内容はもちろんですが、それに加えて顧客の「感情」に訴えかけることが他との差別化につながります。さらに、ブランドに「ストーリー性」を与えることで、顧客の記憶に残るため、競合と並んでも埋もれることはありません。アーキタイプは、このストーリー性においても一貫性を持たせるという役割を果たすので、助けになります。例えば、自動車メーカーのTeslaは「Magician(マジシャン)」のアーキタイプで、未来の移動手段を最先端のテクノロジー(=魔法のような技術)で実現する姿勢が、競合との差別化につながっています。12のアーキタイプを紹介冒頭でも述べたように、アーキタイプには合計で12の型があります。以下では、12タイプを具体的な例やイメージ画像とともに紹介していきます。1.Innocent(イノセント)幸せや調和を保つ純粋な価値観を表現しているアーキタイプです。他のキーワード:シンプル、ノスタルジック、純粋、平和、楽観的など例:花王:環境のことを考えた製品で「平和」や「調和」が強いDove:肌に優しい製品のイメージから「純粋さ」を訴求ネスレ:健康と安心の両面を重視している。「調和」など2.Explorer(エクスプローラー)新しい世界や自分を探求する。発見を促すアーキタイプです。他のキーワード:自由、冒険、向上心、好奇心、 独創性、旅人など例:THE NORTH FACE:「飽くなき探究心」というブランド理念で未知の冒険をサポートするJeep:「自由と冒険」を掲げ、長期にわたって探求心を忘れないブランドTOYOTA:環境に配慮しつつ、確固とした理念を持って事業を進める精神をもつ3.Sage(セージ)知識を追求し、共有するアーキタイプです。他のキーワード:叡智、知識、洞察、専門性、聡明、 冷静、学者など例:Dyson:顧客の悩みを突き詰め、人々の生活をより豊かにする製品開発に重きを置いているSONY:革新的な技術や製品で、顧客に新しい知識や体験を提供Google:知識の収集が簡単にできる検索エンジン4.Hero(ヒーロー)チャレンジ精神や強さが象徴的なアーキタイプです。他のキーワード:パワフル、強い、ダイナミック、 挑戦的な、 決断力のあるなど例:adidas:スポーツを通して人々の生活を変えるメッセージを発信コカ・コーラ:「Paint it RED! 未来を塗りかえろ。」という理念のもと、独自の挑戦的な姿勢が見受けられますNIKE:挑戦する人々を後押しするスポーツブランド。5.Outlaw(アウトロー)秩序に縛られず、ルールを打ち破るアーキタイプです。他のキーワード:革新、反抗、野生的、破壊、 反逆者、 革命児など例:Redbull:革新的なライフスタイルをサポートSupreme:ストリートカルチャーの代表的なブランドで、派手な赤色が特徴的日清食品: 製品の広告やパッケージに、型破りで前衛的なデザインが多い6.Magician(マジシャン)想像力を超え、変化を生み出すアーキタイプです。他のキーワード:変化、魔法、奇跡、神秘、不思議、カリスマ性など例:Meta:「未来に生きる」をスローガンに創造力豊かな未来を目指すTesla:科学とテクノロジーの融合で未来を形作るApple:革新的なテクノロジーで創造力を刺激する体験を提供7.EveryPerson(エブリパーソン)社会に溶け込む・みんなのためにある、親近感のある価値観をもったアーキタイプです。他のキーワード:堅実な、現実的な、平凡な、素朴な、 庶民的な、 親しみやすいなど例:無印良品:日常生活を豊かにする手頃でシンプルな商品を提供UNIQLO:シンプルで普遍的なファッションニトリ:住まいの豊かさを世界の人々に提供するを理念に、家具を中心に取り扱う8.Lover(ラバー)情熱的で親密な繋がりを重要視しているアーキタイプです。他のキーワード:情熱、ロマン、親密、熱烈、エレガント、 洗練、魅惑など例:Dior:高級感とエレガントさを象徴するブランドCHANEL:女性を中心に、ラグジュアリーブランドとして地位を確立しているGUCCI:「最上の伝統を最上の品質で」が根底にある、性別を問わず人気の高いラグジュアリーブランド9.Jester(ジェスター)楽しい瞬間を作り出し追求するアーキタイプです。他のキーワード:楽しい、ユーモアのある、愉快な、遊び心いっぱいのなど例:Disney:クリエイティブな精神で革新的な技術を世界へ発信。世界中の人々を楽しませるグリコ:おまけ付きなど、遊び心を忘れないワクワクする商品展開が豊富任天堂:「独創的」「柔軟性」「チャレンジ」の3点を掲げ、ゲーム業界で地位を確立10.CareTaker(ケアテイカー)他者を支える、思いやりを尊重するアーキタイプです。他のキーワード:寛容な、博愛的な、思いやり深い、献身的な、親切ななど例:ミサワホーム:将来の暮らし方までトータルに考えられた住まいを提供JAL:信頼性の高いサービスと安心感を提供し、乗客の旅を支えている高島屋:丁寧な接客と安心感を重視し、顧客に寄り添ったサービスを提供11.Creator(クリエイター)独創性に長けた価値のあるものを創るアーキタイプです。他のキーワード:創造性のある、芸術的な、 独創性のある、趣のあるなど例:LEGO:創造性を刺激するおもちゃブランドAdobe:創造的なツールでクリエイターを支援Netflix:心を動かす作品を多数提供12.Ruler(ルーラー)安定と秩序を象徴するアーキタイプです。他のキーワード:威信のある、ステータスのある、 力強い、秩序のある、 安定感のあるなど例:メルセデスベンツ:卓越した技術と信頼性を提供クロムハーツ:強さとクールさを兼ね備えたシルバーアクセサリー・レザーブランドラルフローレン:豊かなライフスタイルをコンセプトに、幅広い高級ファッション製品を展開まとめアーキタイプはブランド構築において、「顧客の共感」「ブランドの一貫性」「競合との差別化」を叶えるための強力なツールです。上記の具体例を見ても分かる通り、各ブランドが独自のアーキタイプを活用することで、顧客に強い印象を与え、長期的な成功を収めています。アーキタイプは必ずしも一つに限定されるわけではありません。一つの型の要素がかなり強いものもあれば、複数に当てはまるものもあるので、「Innocent」と「Lover」という風に、いくつかの要素で構成してみるとより詳細で想像に近いイメージが出来上がります。今回はブランド構築と絡めてアーキタイプを紹介しましたが、それだけに限らず応用できる場面は様々です。例えば、マーケティングなどで戦略を練る際に、自社のサービスや製品に合ったアーキタイプに基づいて広告・キャンペーンを打ち出すことができたり、社内でのミッションやビジョンの共有では、抽象的なイメージを伝える手段として役立ちます。ブランドの価値観をより明確にし、顧客や組織内にまでその価値観を浸透させることができるアーキタイプを、ブランド構築に限らず、その他ビジネスの場面でも役立ててみてはいかがでしょうか。