ラフデザインは、一からデザインを作る上で方向性やイメージを伝えるのに重要な役割を果たします。手描きのものからざっくり大まかにコラージュして構成したものなど形は様々です。この記事では、ラフデザインとは何か、どのようにしてつくられ、どんなメリットがあるのかを実例を踏まえて紹介していきます。ラフデザインとはラフ(rough)とは英語で「粗い」「大雑把」という意味で、デザイン用語として用いる場合、デザインのアイデアを簡単に下描きしたものやイメージ画像のことを指します。クライアントとの打ち合わせで整理した情報・要望を視覚化する場合や、一から自分で設計する場合のどちらでも用いますが、あくまでもざっくり大まかに起こしたイメージ全般のことを指します。ラフデザインを活用するメリットラフを起こすメリットとして、以下があげられます。1.アイデアの視覚化企画やサイトのデザイン案をクライアントに提出する際、完成イメージを伝えることや、構図・全体の雰囲気をつかむことができます。データやテキストベースの情報ではわかりにくいイメージを、視覚的に起こして共有することで、クライアントとの認識の差を埋めることができます。2.作業効率の良さ詳細を詰める前段階で作成するため、フィードバックを得やすく、後の修正が減り効率的です。また、素早く描くことができるのもラフの利点なので、手段としてスピーディーで、細かい部分に時間をかける前に大まかな構成を確認できます。3.新しい視点の発見ラフは自由な発想で描くことが出来るため、スケッチしている最中に新しいアイデア・インスピレーションを受けることがあります。描く前には思いつかなかったアイデアが出たり、制作のヒントになることが多いです。ラフデザインの方法ラフデザインを起こす方法として挙げられるものはいくつかありますが、その中でも多くを占めるのが手描きのスケッチです。イメージに近い画像をコラージュしてひとつのイメージとして作成する方法もありますが、手描きは汎用性が高く、紙とペンがあればできるのでラフデザインとしておすすめの手法です。手描きラフの作成過程を実際の例をもとにご紹介!実際に今までの案件で用いたラフデザインと、完成したデザインを比較していくつかの例を紹介します。(私が使用してるのは、CLIP STUDIOというソフトで描いています。)①キャラクターデザイン弊社のSNS運用サービスについてのLPやチラシを作成する際の挿絵に用いました。❶実際のラフ内容:テキストベースでは伝わりづらい企業の悩みや、弊社の強みを、イラストを使用することで視認性を高め分かりやすくする。集客や採用。一般的にまだ広く普及していないSNS運用を、イラストを入れることで詳しくない方でもイメージしやすくなる。気をつけた点:SNSがテーマのため、硬くなりすぎないように可愛らしい印象のイラストに。ここから更に「見た人に印象づけるためもっとコミカルに」というFBを受け修正。❷修正・着色修正点:人にフォーカスを当てて、少し誇張したような表情や動作にすることでコミカルな要素をプラス。配色はTikTokをイメージして濃いピンクとターコイズブルーを使用。ラフと比べると構図は変わりませんが、イラストの印象はより強くなったように感じます。②チラシデザイン弊社のSNS運用サービスについてのチラシを作成する際に用いました。❶実際のラフ内容:チラシの表紙デザイン。SNSを用いて集客と採用を強化するサービスを提供するという内容。気をつけた点:「集客」「採用」「SNS」の3つを主なキーワードに絞る。使用する媒体がTikTokのため、こちらでも配色は濃いピンクとターコイズブルーに黒文字。案の概要:①では弊社とクライアントが手を取り合っているイメージ、②と③はわかりやすさを重視して、スマートフォンを持つ手以外の要素を入れずに作成。④はスマートフォンが話しているようなアプローチで、パッと見て引きのあるデザインにしました。引きを重視し、④に絞ってAi上で清書をしたものがこちらです。❷清書注意すべき点:ラフでは細かく表現していなかったところが、清書では表現されます。その分データに起こすと、ギャップが生まれがちです。この例の場合は、情報量が多く目立たせたい文字に目が行きにくい印象になってしまいました。ラフは大まかな構図を決めるものですが、清書した際のことも頭の隅においておくと、ラフとのギャップで失敗しにくいです。これを受けて再検討し、作成し直したものが以下です。❸修正後清書修正点:文字を読みやすいもの且つ伝わりやすくするために、ラフの②と③に近い構図で、スマートフォンを持った手のところにイラストを使用することで目を引く役割を果たすよう調整。イラストや背景の柄以外の要素が減り、文字も最低限伝えたいことに絞ることでパッと見てわかりやすく引のあるデザインになったかと思います。③ロゴデザイン最後にロゴのデザインについてです。本件は別のブログでも詳しい内容触れていますので、こちらも併せて参考ください。日本酒スタンド「SAKEスタンド1-1」のロゴができるまでロゴデザインはラフの大まかでスピーディーに作業できる利点がよく活きるデザインの一つだと思っています。ロゴを作成する際は、たくさんのアイデアを出して何パターンも考案するため、クライアントとデザインを決定する際にも大変役立ちます。❶実際のラフ内容:新しくオープンする日本酒スタンドのお店のロゴデザイン。気をつけた点:「SAKEスタンド1-1」という店名のため、特徴である1-1を文字だけでなくデザインとしてもロゴに組み込むことを意識。赤色で表しているところが1-1になっており、日本酒の瓶やおちょこ、米などもモチーフに組み込んでいます。乾杯している手を1-1に見立てたものや、中身・水面を1-1に見立てたものなど様々です。このラフをもとにお客様と相談させていただき、左列上から2個目が一番イメージに近いとのことでしたので、これをベースに色の違うパターンも作成し完成したものがこちらです。❷案の選定と清書工夫:黒地のものとそうでないもので使い分けられるように2パターン作成しました。日本酒の高級感を出すために文字は金色を使い、和の要素を入れるためにあえてラフに近い手描きのタッチを残しました。手描きにしたことで温かみが加わり、日本酒の親しみやすさを表現できていると思います。最後にデザインをする上でのラフのメリットを、実例と共に紹介してきましたがいかがでしょうか。「ラフデザインを活用するメリット」でも述べたように、視覚的に伝えることは、相手とのコミュニケーションの上で大きく役に立ちます。文字では伝えにくいことも、ラフデザインがあれば視認性が高まり、お互いの認識の相違も防ぐことができます。手を動かしてみることで、もともと頭にはなかったアイデアが生まれることも多々あります。デザイン作成の際は、クライアントの立場になって、内容の分かりやすさを意識することが大切です。要望にしっかり応えられるよう、相手とのコミュニケーションの一つに取り入れてみてはいかがでしょうか。