ブランディングとは何か? 成功している会社が一貫した“らしさ”のデザインにこだわるのは、「選ばれる理由」を伝えるためです。「御社らしいデザインをつくりたい」。そういったご相談をいただくたびに、私たちは必ず問い直します。らしさとは何か? それをどうデザインに落とし込めば「選ばれるブランド」になるのか?ノックデザインでは、企業のパーソナリティ(らしさ)とポジショニング(市場での立ち位置)、この2軸をもとにデザインを設計しています。この2つが明確になることで、単なる見た目の印象を超えた、信頼と共感を積み上げるブランドづくりが可能になると考えています。本記事では、ブランディングとデザインの関係性をひも解きながら、実際の成功事例とともに、私たちの考え方と進め方を具体的にご紹介します。※本記事では、企業の“らしさ”をデザインに落とし込む方法にフォーカスしています。ブランディングそのものの定義や必要性、継続的な発信の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。ブランディングとは?マーケティングとの違い・関係・必要性を実例からわかりやすく解説なぜ“見た目”がポジションを決めてしまうのか?外見から“期待値”は決まってしまうたとえば下記の2店舗の写真。どちらも飲食店ですが、左の店舗:安そう、早そう、気軽そう右の店舗:高そう、丁寧そう、落ち着いて食事できそうこのように、同じ業態でも「価格帯」「サービス品質」「利用シーンの想定」などが、外観=デザインから無意識に伝わっています。つまり、見た目の印象がポジショニング(立ち位置)を規定してしまうということです。ここがズレると、「期待値と実態のギャップ」が生まれ、ターゲットでない層からの問い合わせが来たり、ブランドイメージが曖昧になったりします。ポジショニングはKBF(購買決定要因)から導くでは、自社の「立ち位置」をどのように明確にすればよいのでしょうか。ここで活用できるのが「KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)」というフレームです。たとえば家具であれば。家具のKBFターゲットの重点評価自社A社B社C社デザイン性◎◎▲◎○機能性○○○▲○価格○▲○○◎品質・耐久性○○◎○▲ブランド×○○○×デザイン性、機能性、価格、品質・耐久性、ブランドなどが挙げられます。これらのKBFに対して、顧客が何を重視するか競合はどこが強いか自社はどこに強みがあるかを整理することで、自社の立ち位置=ポジショニングが見えてきます。KBFは、基本的にヒアリングを通じて整理していきます。事業内容や営業時の強調ポイント、競合と比較されたときの印象などを掘り下げることで、クライアント自身も気づいていなかった「選ばれる理由」が見えてくることもあります。もちろん、予算やスケジュールによっては、ヒアリングを簡易化し、参考サイトやペルソナベースでの設計にとどめるケースもあります。▷ より詳しいKBF整理やポジショニングマップの考え方はこちらも参考になりますポジショニングマップの作り方~肝となる軸の決め方をテンプレート付きで解説~▼ KBFを明確にするためのヒアリング例お客様が御社を選んでくれる理由は何だと思いますか?競合と比べて優れていると感じる点はどこですか?商談時によく聞かれる質問、比較されるポイントは?過去に失注した理由、受注できた決め手は?「安くていいもの」「高くても安心」など、顧客に伝えたい前提価値観は?スペックじゃない。“なんか好き”を生むブランドの人格とは?ポジショニングで差別化ができても、同じポジションに競合は存在します。 たとえば、吉野家・すき家・松屋などは、価格・提供スピードなど似通っていますが、それぞれまったく異なる“らしさ”を感じるはずです。ここで問われるのが、情緒的価値=ブランドの人格(パーソナリティ)です。NikeとNew Balanceの違いから見るパーソナリティNikeJust Do It。ストリートカルチャー、挑戦、勢い、個の強さを感じるブランドNew Balance落ち着き、誠実さ、知的でビジネスカジュアルにもなじむブランドどちらも高品質なスニーカーを提供していますが、「なんか好き」と感じるポイントは、スペックではなく人格的な好感や共感に根差しています。パーソナリティをどう設計に落とし込むかノックデザインでは、パーソナリティを以下のように把握していきます。スタートアップ・ベンチャーの場合創業者=会社の価値観となっていることが多いため、代表インタビューを通じて思想や美意識を言語化します。中堅以上の企業の場合部署ごとの文化が異なる場合もあるため、社内アンケートやワークショップを通じて、共通する価値観やトーンを整理します。▼ パーソナリティを探るための主な質問例なぜこの事業を始めたのか?(創業ストーリー)社員に共通する価値観や美意識は?社外からどう見られたいか?他社と比べて「絶対に譲れない」と感じる点は?目指している社会像、未来像は?ブランドアーキタイプへの整理企業のパーソナリティを、「ユングのブランドアーキタイプ」という12の人格フレームに落とし込むことで、トンマナ設計やコピー開発に一貫性を持たせています。もちろん、パーソナリティは1ブランド=1アーキタイプで固定されるものではありません。たとえば「Hero=60%、EveryPerson=40%」のように、複数の要素を組み合わせて構成されるケースも多く存在します。ブランドの文脈や成長フェーズによっても比率は変化していくため、柔軟に捉えることが大切です。▷ ノックデザインのブランドアーキタイプ解説はこちらアーキタイプとは?ブランド構築のヒントになる12の型成功企業の事例に学ぶ、“らしさ”が伝わるデザイン設計株式会社ステッドPosition(ポジショニング): 「技術で解決するIT企業」ではなく、「人に寄り添い、二人三脚で課題を解決するDXパートナー」という立ち位置を明確化。無機質で機能偏重になりがちなIT業界の中で、ヒアリング力と関係構築力を軸に、「信頼して相談できる存在」として選ばれるポジションを目指しました。Personality(企業の性格・価値観): 温かみがあり、相手に寄り添う誠実な姿勢を大切にする企業文化。社員一人ひとりの柔らかく親しみやすい人柄や、聞き手として丁寧に向き合う姿勢が、社外との関係性づくりにも表れており、「ともに考え、ともに歩むパートナー」としてのブランドイメージを支えています。実績詳細はこちら株式会社グロースピリットPosition(ポジショニング): “すぐに成果を求める採用支援”ではなく、戦略設計と関係構築を重視した「長期的に組織の成長を支える人事パートナー」としての立ち位置を設計。顧客との関係性を築きながら信頼を積み上げていく姿勢を、サービス導線・コンテンツ設計の両面で体現しました。Personality(企業の性格・価値観): 冷静で論理的ながらも、丁寧に相手と向き合う真摯な姿勢が印象的。提案力や分析力に加え、相手の課題に寄り添う“誠実さ”がブランド全体に一貫して流れており、「頼れる専門家」としての信頼感を醸成しています。実績詳細はこちら“なんか伝わらない”を生む原因と、その解決法ポジションやパーソナリティが明確でないまま制作を進めてしまうと、以下のような“ズレ”が生じるケースがあります。なんとなくかっこよく作ったけど、誰にも刺さらない競合サイトに寄せすぎて、逆に埋もれてしまうユーザーにとっての価値より、自分たちの言いたいことだけを優先した構成企業らしさが薄く、どこにでもあるサイトに見えてしまうこうした問題は、設計前の「言語化プロセス」を丁寧に行うかどうかで回避できます。また、ポジショニングやパーソナリティをきちんと設計していたとしても、最終的にユーザーとの接点となるコンテンツや発信がその設計と連動していなければ、“ブランド”としての認知は蓄積されていきません。「ブランディング」は“brand”と“ing”に分けて考えることができます。brandは「どういうブランドであるかを定めること」、そしてingは「それを継続的に体現し、発信し続けること」。たとえば、「顧客に寄り添う姿勢」を大切にしている企業が、ポジショニングもパーソナリティも明確に設計できていたとしても、そのまま放置していては意味がありません。実際には、日々の発信やコンテンツづくりなどで「お客様インタビュー」や「導入事例」「社員の声」などを通じて、「この会社は本当にそういう姿勢なんだ」と感じてもらう必要があります。この“ing”の部分を正しく積み上げていくためにも、最初の「ポジション × パーソナリティ」の明確化が欠かせないのです。まとめ|“らしさ”を軸にしたデザインが、会社を選ばれる存在にする“らしさ”を軸にしたデザインは、会社を選ばれる存在に育てていくための強力な手段です。ポジション(市場での立ち位置)とパーソナリティ(企業らしさ)が明確になることで、デザインは単なる装飾ではなく、戦略と思想が交差するコミュニケーションツールとして機能します。私たちノックデザインは、目に見える表層だけでなく、その背景にある思想や価値観、ビジネス構造までを丁寧に汲み取り、企業らしさを体現するデザインを設計してきました。「自社の差別化ポイントがわからない」「Webサイトを作り直したいけど、何を軸にすればいいか迷っている」そんな企業様に対しては、ブランド設計から情報整理、デザイン、そして発信まで、一貫した視点でのご提案が可能です。自社らしさをどう表現すれば伝わるか、一緒に整理しながら考えていけたらと思います。まずはお気軽にご相談ください。